「薔薇王の葬列」には、その存在自体が謎に包まれているキャラクターが登場します。
史実ではその場にいあわせた事実はなく、また「薔薇王の葬列」の作中でも実在しているのかが曖昧なキャラクターたちです。
今回はそのひとり、ジャンヌ・ダルクについて触れていきたいと思います。
ジャンヌといえば、亡霊の姿で何度も主人公・リチャードの前に表れては、心を惑わす存在ですよね。
ジャンヌ・ダルクの正体や目的について、そして、ジャンヌとリチャードの関係について、順番にまとめていきます。
なるべく具体的な場面のネタバレなしで進めていきますので、今後の展開を楽しみにしていらっしゃる方もご安心くださいませ!
「薔薇王の葬列」ジャンヌダルクの正体や目的について
まずはジャンヌ・ダルクの正体や目的について基本的なことをまとめていきたいと思います。
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ジャンヌ・ダルクが作中に初めて登場するのは、第1巻1話です。
まだ幼さの残る主人公・リチャードに、「両性具有の体では、父親のようにはなれない」と言って去っていきます。
最初は、このセリフがとても残酷な言葉のようにも感じるのですが、後の展開を考えると必ずしもそうではないようにも思われるから不思議ですよね。
ジャンヌというキャラクターは、つかみどころのない存在です。
ということで、ジャンヌの性別について、そしてその正体、ジャンヌはフランスの悪魔なのか?という内容に触れていきます。
そして、このテーマの最後にジャンヌの目的と思われるものについて考えていきたいと思います。
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ジャンヌの性別は男?女?
まず、ジャンヌの性別についてです。
「薔薇王の葬列」で主人公の前に現れるジャンヌダルクという、亡霊のような存在の性別は不明です。
見た目も中性的で、ハッキリと男か女かと判断するのは難しい存在のようです。
「薔薇王の葬列」の世界の中でもジャンヌダルクは実在した人物として描かれています。
2話冒頭の回想で主人公リチャードの父・ヨーク公が捕らえて火刑に処している場面が登場しますよね。
ですから、主人公リチャードが見ているジャンヌは、既に亡くなっており、少なくとも生身の人間ではないということは確定しています。
また、ジャンヌの初登場時のセリフから考えると、その姿には主人公リチャードの内面が強く反映されている可能性が高いです。
つまり、主人公リチャードの前に現れるジャンヌダルクという存在は性別についても、はっきり判断することが難しく、非常に曖昧な存在のようです。
ジャンヌの正体は男装の罪で処刑された悪魔?
ジャンヌダルクは「男装の罪」で処刑された悪魔だと言われます。
それは作中でもジャンヌダルクの死後に人々が噂をする際の言い方だと思われます。
同時に、イングランドとフランスの戦争の中でのことですから、イングランド側がジャンヌダルクを必要以上に悪し様に噂するのは、自分達の正当性を主張する意味もあったのでしょう。
ですが、主人公・リチャードにとっては違います。
ジャンヌダルクを父が殺した、それも”男装の罪”ということは、たとえ噂だとしても父を敬愛するリチャードには重く突き刺さります。
なぜなら、リチャードも両性具有で、膨らみ始めた胸を潰して男装をして生きているからです。
ジャンヌはフランスの魔女
ジャンヌは”フランスの魔女”と作中でも呼ばれています。
ヨーク公がジャンヌを捕らえる際に、そのように言っていますよね。
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本日9月21日は「薔薇王の葬列」リチャードの父・ヨーク公のお誕生日🎂✨
おめでとうございます✨#薔薇王の葬列 #ヨーク公 pic.twitter.com/QtTFF6x6ir
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そしてジャンヌは死の間際には不吉な予言めいたセリフも残しています。
そのせいか、ジャンヌダルクの亡霊が森の奥にいる、なんて噂も作中では存在するようです。
両性具有の我が子リチャードのことは特別に可愛がるような一面を見せてはいますが、百年戦争の中では敵に対して冷酷な一面もあったみたいですね。
ちなみに、魔女で火刑というと魔女狩りのイメージかもしれませんが、史実ではジャンヌダルクは魔女狩りとは時代が異なります。
ただ、捕らえられ不当な裁判の末に火刑になり命を落としたということは共通しています。
ジャンヌの目的
ジャンヌの目的は作中でハッキリと語られているわけではありません。
考察していきたいと思います。
ジャンヌは、主人公リチャードの前だけに現れます。
そして、ときにはリチャードを揶揄うような発言もしますが、基本的には助言をするような場面が多く見られます。
その助言というのも、例えば、その時点でリチャードが一番愛している人と幸せになるような展開に導くことなどです。
まるでそれは、リチャードが「悪魔の子」にならないように振る舞っているとも思えます。
ジャンヌダルクは既に亡くなっています。
ですから、リチャードの前に現れるジャンヌダルクは、あくまでその存在をリチャード自身が内面化したものではないでしょうか。
リチャードが、心の中ですら自らの言葉として語れない欲求や思いを代弁する存在なのかもしれません。
おそらくリチャードは無意識にジャンヌダルクの存在を生み出しているのですが、それはリチャード自身が心の中で殺してしまった自分自身の姿なのかもしれません。
ジャンヌとリチャードの関係
さて、ジャンヌとリチャードの関係についてです。
既に少し語ってしまったのですが、改めて整理の意味も含めてみていきましょう。
主人公のリチャードをサポートする存在というのは、ジャンヌの他にも、白猪の「白いの」も登場します。
白いのはリチャード以外も認識でき、触れ合うことができるようですが、神出鬼没な生き物です。
白いのはリチャードの向かう方向を案内したり、手引きしたりと、リチャード以外の人間と触れ合えることを利用してか、物理的に重要人物と引き合わせたり、逃がしたりというサポートが多く見られます。
一方で、ジャンヌはリチャードにしか認識できない存在ですから、ジャンヌはリチャードの内面のみに干渉して鼓舞するような場面が見られますよね。
というわけで、ここからはジャンヌとリチャードの出会いについてまとめ、そしてジャンヌはリチャードの仲間なのか?という点について考えていきましょう。
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ジャンヌとリチャードの出会い
ジャンヌとリチャードの出会いは突然のものでした。
父と長兄が遠征の間、まだ幼いリチャードとジョージは同行させてもらえず、ネヴィル家に預けられることに。
しかし父に憧れるリチャードは、自分が戦いの場に連れて行ってもらえないことに焦りを感じています。
一緒に留守番するジョージも道中では馬に乗せてもらえていますが、リチャードは馬車に乗せられました。
おそらく、兄のジョージもいずれ時が来れば父・ヨーク公と共に戦場に出られるでしょう。
しかし、両性具有の自分は、戦場には連れて行ってもらえないのではないか?という疑念をリチャードは持っていたと思います。
そんなときに現れたのがジャンヌです。
焦って「いつになったら父上のようになれる」と自分を追い詰めるリチャードの前に現れて、「その身体じゃあ無理だよ」と言います。
それがふたりの最初の出会いです。
この言葉はリチャードにとっては残酷で、深く刺さる言葉でした。
結果としてリチャードはさらに訓練にまい進するようになります。
しかし、一歩離れて考えてみると、ジャンヌの言葉はリチャードを戦いから遠ざけようとしているようにも見えてきますよね。
ジャンヌダルクを捕らえ、殺すことになったヨーク公のようにはなれないとジャンヌダルクが言ってくるということの意味を考えると、ただリチャードを貶そうという意図だけではないものを感じますよね。
ジャンヌはリチャードの仲間?
それではジャンヌはリチャードの仲間なのでしょうか?
「薔薇王の葬列」は2013年の月刊プリンセス11月号より連載が始まりました。
そしてこの度、連載8周年を迎えることができました。
これもひとえに読者の皆様の応援があったからこそ。
薔薇王は今月号を含め、残り4話で完結となります。
「リチャードの物語」を最終回までお見守りください。 pic.twitter.com/xupm49SZxu— 薔薇王の葬列🌹コミックス16巻12/16発売&TVアニメ1/9放送開始🌹 (@baraou_info) October 5, 2021
先に「ジャンヌはリチャードの内面なのでは?」という予想について話しましたが、実はそれでは説明がつかないシーンもあります。
リチャードが行く先に何があるのか知らないはずなのに、ジャンヌが誘導しようとする場面などが見受けられるのです。
ですから、ジャンヌはジャンヌとして独立した存在だと考えた場合というのもまとめてみます。
ジャンヌの発言はリチャードに対して「王冠を求めること」から遠ざけようとしているように見えます。
それはまるで、王としてではなく、ひとりの人間として自分を愛してくれる人と一緒にいられるように誘導しているようです。
王になることや、王冠を求めること。
それがリチャードが父から受け継いだ、戦いの中に身を置いてしまう呪いなのだとしたら、ジャンヌはそれからリチャードを遠ざけようと振る舞っているという解釈もできそうです。
ですから、ジャンヌが仲間かというと、必ずしもそうではありません。
ジャンヌは王冠を目指そうとするリチャードに対しては協力的ではないからです。
しかし、リチャードが愛している人に歩み寄ろうとするときには一歩背中を押そうとするような存在です。
仲間とは言えませんが、運命共同体のような位置づけといえるかもしれませんね。
まとめ
ジャンヌの存在は謎が多くて、必ずしもこれが正解、と思える部分がないのが正直なところです。
しかし、敬虔なヘンリー六世が争いを避けようとしていたように、主人公リチャードの前に現れるジャンヌダルクも同じ神を信仰していた存在だからか、戦いを避けられるように導こうとしているのでは?とも解釈できるところが印象的です。
主人公のリチャードにとっては残酷すぎる言葉を投げかけてくることもあるのですが、単に悪霊のような存在ではないということに今回記事をまとめていて改めて気づくことができました!
キャラクターごとにスポットを当ててストーリーを追っていくと、新たな発見がありますね!
アニメもはじまりますが、ジャンヌダルク役は悠木 碧さんが演じられることが発表されています!
アニメではどんなジャンヌ像が見られるのか……とても楽しみですね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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